2020年さんまの初競りは一尾驚愕の6000円を付けました!年々漁獲高が減っているが、ここまで高騰すると、もう庶民の口には入らない代物になってしまったのかと焦ります。昨年も決して安くはありませんでしたが、ずっと高かった訳ではありません。いつから安くなるのか去年の流通事情から今年の価格推移を考えます。
「さんま」漁の解禁時期
水産庁による試験操業は5月から始まりますが、毎年7月初旬に「さんま」漁が解禁されます。
2020年の今年は7月15日に初めて水揚げされました。さんまが日本近海に遊来する時期と重なります。
「さんま」の旬は
「さんま」は漢字に起こすと「秋刀魚」と表記する事から、晩夏から秋に旬を迎える事が解ります。
昔は早ければ5月~6月に、日本近海に遊来し始めましたが、昨今は遅れ7月初旬になっています。
年によって漁獲高は変化しますが、昔から初夏から豊漁になることはなかったのでしょう。
外気温の変遷
私が子供の頃、真夏の暑い日に外気温が30℃を超えると驚いたもので、親から注意されました。
今では聞かない表現ですが「日射病」になるよ、「光化学スモッグ」が出ているから家に居なさいと言われたものです。
最近は6月から7月には最高気温が30℃を超え、真夏の日には、35℃を超える事が当たり前です。
私が知っている過去40年の間に、夏の平均気温は5℃程度、上がっているように感じます。
一方40年前の冬はどうだったのか。真反対の季節である夏と同じことが言える状態でした。
11月下旬から12月初旬には霜が降りて、通学路にある田んぼが格好の遊び場だったのです。
秋に収穫され刈り取られた稲の根っこが下りた霜で凍結し、踏むとザクザクと音を立てる素朴な遊びです。
また自宅敷地内の水道場付近に置かれたバケツに溜まった水に薄氷が張っている光景がありました。
それが今ではほとんど見られなくなり、地球が確実に温暖化した事を、否応なく知らされています。
地球温暖化と海水温の関係
私が感じた経験ですが、40年で外気温が5℃上昇していたら、毎年0.125℃ずつ上がっている計算です。
0. 125℃の変化に気付く事ができる人は少ないので、大きな危機感を持つ事なく今に至ります。
太陽に照らされた空気は、夏でも冬でもたちまち温度が上がるので、その変化を敏感に感じます。
しかし太陽に照らされても、水の温度は、空気ほど変化する事はなく、いつも一定に感じます。
温められにくい水も、地球全体の温度上昇につられて、平均温度が高くなり続けて来たのです。
「さんま」の時期が遅れる理由
以前に比べて「さんま」が来遊する時期が変わったのは、地球温暖化に伴う海水温の上昇が関与していると考えられます。
もともと「さんま」は冷たい海水音を好むので、回遊する領域が、北側に移動したので、獲れる時期が遅くなったのです。
私の感覚ですが、40年をかけながら、温度変化を受けにくい海の中の環境も変化していたのです。
その変化を敏感に感じ取る生物たちの生息域が共に変化し、「さんま」が日本近海に近づく時期が遅れるのです。
「さんま」は減ったのか
日本では万葉集に記録されているほど、「さんま」は身近なものとして今まで食されてきました。
素朴な生活であった昔、漁師たちは手漕ぎの船なので、人力で操業できる範囲に限られました。
産業革命以降、日本でも内燃機関(エンジン)を搭載する船が出始め、より遠くの海で操業するようになりました。
魚を獲る網も変化します。天然繊維で編まれた網から、化学繊維で編まれた網が登場するのです。
これにより網の耐久性が飛躍的に上がり、漁業コストが下がるので、「さんま」は庶民に近づきます。
漁法も進化します。一本釣りから定置網漁、流し網漁など、より漁獲高が上がる漁法が普及しました。
日本周辺の各国も「さんま」を獲り始めます。ロシア、中国、韓国、北朝鮮、台湾などの国々です。
水産資源を追い求め各国が群雄割拠するのですから、「さんま」が獲れなくなりつつあるのは自然の流れです。
それでも「さんま」は安くなる
「さんま」は時代の変遷と共に獲れなくなっている訳ですから、昔ほど安くなることはありません。
でも1尾6000円はあり得ない価格です。これは「初競り」に起こる「ご祝儀相場」と言うものです。
今はまだ初夏で、晩夏から秋にかけて旬を迎える事で、「さんま」の価格は低下傾向になります。
盛夏を超えて晩夏から初秋を迎えると、日本近海に接岸する「さんま」の数が増え、漁獲高が伴うからです。
昨年の例から考える価格
今年の「さんま」初競りによる価格には驚かされましたが、去年も決して安くはありませんでした。
業務スーパーの店頭に並ぶ「さんま」の価格は安定していましたが、初夏の「さんま」は小ぶりでした。
そして1つのトレーに入っている「さんま」の数量が、「5尾」や「6尾」で調整されて並んでいました。
着目する点はトレーに入っている「尾」数だけでなく、個体の大きさが変化を見せていました。
初夏から盛夏の時期は、たとえ「尾」数が同じでも、脂が乗っていないのか、小ぶりな印象でした。
しかし8月中旬から下旬にかけて、トレーに入っている5~6尾の個体の大きさが変化をし始めます。
9月に入ると「これでもか」と言わんばかり、丸々と太った「さんま」がトレーの中を占めて陳列されます。
最盛期の「さんま」
最盛期を迎えた「さんま」が5~6尾詰められたトレーの表示価格は、出始めとほぼ変わる事はありません。
8月後半から店頭に並ぶトレーの「さんま」は、刺身で食べる事ができる鮮度で供給されていました。
旬が近づく最盛期の「さんま」は、焼きや煮つけにするのがもったいないほどの鮮度で並びます。
家族構成に因りますが、夫婦2人の我が家では、刺身で3~4日楽しめる分量に満足します。
1つのトレーに5~6尾入っていますから、珍しい「さんま」の刺身をこれだけ楽しむことができるのです。
慌てなくていい「さんま」の旬
「さんま」の旬の時期は、毎年変化します。今年の初競り価格に驚かれた人は多くいます。
でも焦る事はないでしょう。不漁と言われた昨年でも、上述のような変遷を辿り、安価で美味しく頂けました。
年によって漁獲高と水揚げ高は変わるので、去年1年を例に挙げて断言する事はできません。
しかし秋の味覚の王者「さんま」の旬を迎えるころ、庶民の手に届く範囲になり、季節感を味わう事が出来るはずです。
今は高い「さんま」ですが、8月から9月と季節が進む中で、より鮮度が高く、安い「さんま」が口に入ります。
来年以降はどう変遷するかは筆者も判りません。願う事は、今まで通り、多くの人々が「さんま」を味わえる事が続く事です。
でも去年は1尾100円以下になり、私たち庶民が「さんま」を楽しむことができたので、今年も大きく変わらないと見通しています。