6月に旬を迎える「梅」が業務スーパーの店頭に並びます。梅酒や梅シロップを作って楽しむ方も多いのですが、洋菓子に使う「アプリコットジャム」になる事を知っていますか?梅に対する「和」のイメージが完全に覆るアプリコットジャムの簡単な作り方を公開します
こんな人におすすめ
- 「梅干し」「梅酒」「梅シロップ」以外の梅の活用方法を知りたい。
- アプリコットジャムが自作できるの?作る方法を知りたい
- 梅が一番美味しいタイミングはいつなのかを知りたい
- 梅酒に漬けられない割れてしまった梅の活用方法を知りたい
「梅」のジャムって美味しいの?
私たち日本人は、梅を「梅干し」や「梅酒」「梅シロップ」に加工して、旬の味覚を楽しんできました。
梅干しはご飯のお供として愛食され、お弁当のご飯にのせた「日の丸弁当」としても馴染み深いものです。
収穫した梅をボトルに入れた後、角砂糖を敷き込み、ホワイトリカーを注ぎ込んで作る梅酒を楽しみます。
いずれも古来から日本人が美味しく梅を頂くために伝わってきた加工手法で、その印象は「和」でしょう。
そんな「和」のイメージが強い梅をジャムに加工して、「洋」のイメージのアプリコットジャムになると想像できないかもしれません。
でも「和」のイメージ満載の梅をジャムに加工すると驚きます。既成概念が覆る事は間違いなしです。
業務スーパーで買った梅
6月に旬を迎えた梅を、業務スーパーで2袋買ってきました。
サイズは「M」か「L」に分けられていますが、なぜか1袋の価格はあまり変わりません。
グレードによる差もあるのでしょうが、1kgで1,000円前後のイメージを持っています。
1袋に入っている個数で調整されているのでしょう。今回は特価品を買いました。
袋の中の梅の色を見てみましょう。普通梅酒に漬ける梅は緑色をしている「青梅」ですね。
袋に詰められた梅の色は、鮮やかに赤みがかった個体や、黄みがかった個体も交じっています。
収穫された時期と、流通過程に要した時間、梅それぞれ個体の質に因って、色合いが変化しているからです。
ジャム加工のタイミング
その昔高級品であったバナナも、今や私たち庶民が気軽に食べる事が出来る南国のフルーツですね。
このバナナを収穫する時期は、まだまだ青い(緑色の)時に南国で行われ、店頭で黄色くなるタイミングに合わされています。
色づき始めている梅もありますが、青梅の個体も多いので、買ってすぐにはジャム加工に向きません。
個体の状態と保存方法にも因りますが、色の変化から数日以上、袋詰めのまま常温で置きます。
色の変化は毎日確認してください。やがて黄みがかった色から、鮮やかなオレンジ色に変化する個体が現れます。
袋に詰められた全部の梅が、同じ速度で熟れて行く訳ではないところが難しいポイントです。
熟れすぎると中から果汁が出たり、潰れ始めたりしますが、その直前くらいまで追熟をさせて下さい。
レモン、みかん、いちご、キウイ、メロンなど、多くのフルーツ(果物)を楽しんでいます。
これらすべてのフルーツ(果物)は、収穫から店頭、そして食卓に並ぶ過程で、熟し続けるのです。
梅も同じように、熟し続けています。これは「追熟」という作用によって、色づき方が変化します。
追熟した梅を水洗いする
まず大切なのは、袋に入ったままで追熟させて、タイミングが来たら、そこで水洗いする事です。
買ってきた直後に水洗いすることなく、袋詰めのまま、色の変化を観察して下さい。
そして30分から1時間、水の中に漬け置きして下さい。表面の汚れと共に灰汁が抜けて行きます。
洗剤などで洗う必要はありません。熟し始めた梅はデリケートです。優しく水を切りましょう。
鍋で煮る
各家庭にある鍋の大きさは、所帯構成によって違いますから、あまり気にする必要はありません。
今は梅の重量を1kgとします。これを基準に、鍋に入れた梅が水に漬かる状態で重量案分して下さい。
欲張って鍋ヒタヒタに水が来るレベルまで梅を入れると、沸騰した時にお湯が溢れます。
鍋の八分目程度にしておくと、ちょうど良いでしょう。
この時の注意点は、グツグツ煮込んではいけません。鍋から湯気が上がったら火を止めます。
シンクに鍋をそっと傾けながら、鍋の煮汁だけを捨てて行き、梅がこぼれ落ちないようにします。
煮汁で熱が加わった梅がこぼれ落ちると、脆くも潰れてしまい、ジャムに使えないからです。
これと同じ作業をもう一度繰り返して下さい。次も同じく煮詰めてはいけません。
灰汁を取る
鍋で煮ていると、煮汁の表面に泡が浮き上がってきます。この正体は灰汁で、美味しさを損ないます。
1回目、2回目も灰汁の正体である「泡」が浮いて来ますが、お玉で掬い取って下さい。
完全に取り除くのは無理です。およその感覚で結構です。用意したボウルに移し替えていきます。
梅を2回茹でる作業が終わると、ゆで汁をゆっくりとシンクに流し、湯切りします。
残った梅は、そっとざるに移し替えて下さい。一気にすると火が通った梅が潰れてしまいます。
うらごしの注意点1
梅の実は、種を中心に果肉が存在し、それは表皮で守られています。ジャムになるのは果肉だけです。
表皮と種はジャムにすることは出来ないので取り除きますが、まずは表皮に注意しましょう。
種の表面もそうですが、表皮の内側にも梅の果肉が多くついていて、これを採り尽したくなります。
でもここで欲張ると、梅の表皮直下に潜む、渋みや灰汁が出てくるので、味わいに影響します。
表皮が潰れない程度に果肉を取り除くのがコツです。あまり多くの果肉を残すのももったいないですから、ゆっくり頑張ってください。
うらごしの注意点2
一般にうらごしは、ガーゼやざるなど、縦横に編まれた繊維や網状の容器を用います。
食物繊維が豊富な梅から出てくる果実は、カーゼやザルの目をいとも簡単に埋めて出なくなります。
お玉などの調理器具で梅の実を越しだすと遅々として進まず、いらいらして素手の作業を試みたくなります。
でも素手の作業はしない方が得策です。梅の酸性は強烈で、手の表面がヒリヒリしてきます。
市販のゴム手袋を着用して、この作業をすれば、多くの人は梅の酸に負けて痛い思いをしなくて済みます。
ジャムに必要な糖分
このことは梅ジャムを作る冒頭で伝えていますが、基準の量を再確認しておきましょう。
梅の重量を1kgとした時に、砂糖はその半分の500gを基準にするとちょうど良い甘みです。
ちょうど良い甘さの感覚は人によって異なりますが、甘過ぎると梅独特の酸味の良さを殺してしまいます。
最初は梅の半分の砂糖の量で作ってみて、好みの甘みと酸味のバランス点を探ってみて下さい。
次はジャムを作ります
ガーゼやざるなどでうらごしして取り出した果肉を、容量十分な鍋に移し替えて下さい。
そこへ先ほどの基準で計量しておいた砂糖を加えたら、ガスコンロを点火して加熱を始めます。
鍋の材質にも因りますが、中火で加熱をはじめて下さい。これを放置せず、へらで撹拌しながら変化を見ます。
これを放置してしまうと、加熱時間によっては、焦げ始める事があって、ジャムの風味を台無しにします。
焦げる原因は加えた糖分(糖質)で、焦げた香りがジャムに充満してしまうと、もうダメになります。
加熱を始めたら、付きっ切りで見守る必要があり、手間がかかる印象がありますが、それは10分もかかりません。
余計な水分が蒸発すると、ジャム特有のとろみが出来始めますが、最初は緩めで止めましょう。
撹拌しながら煮込めば煮込むほどとろみが増していきますが、熱によるビタミン崩壊が進みます。
自然の恵みを余すことなく頂くべき食材の良さを殺してしまうのは、もったいない限りでお勧めできません。
出来上がったジャム
どうですか?このジャムが梅から出来上がった物だと思いますか?私は今までの常識が覆りました。
色はマーマレードのようで、赤しそで漬けられた梅干しや、青梅で作られた梅酒の梅と一線を画しています。
出来上がった「梅ジャム」を口にすると、かねてから持っていた梅に対する印象はかけらもありません。
「和」一辺倒であった梅に対する印象が、180°変化した「洋」の印象に変わりました。まさに「アプリコット」です。
梅ジャムのアレンジ方法
ここまで読み進めてくれた方は、「こうしてみたい!」など、すでに想像力が働いているでしょう。
でもどうアレンジしたら良いかと感じている方に、私の実感をお伝えしたいと思います。
<ヨーグルト>
乳酸菌豊富で、腸内の善玉菌の活性化を図るべく、毎朝少量のヨーグルトを食べる方も多いはず。そのヨーグルトに、梅ジャムを好みに応じた適量を加えて、食べてみて下さい。
<梅ジャムジュース>
業務スーパーには500ccの炭酸水が、およそ40円以下で買うことが出来ます。
炭酸が抜けない程度に上手く撹拌して、アプリコット炭酸ジュースを楽しむ事ができます。
<食パン>
パン食習慣の方であれば、バターかマーガリンを塗ったトーストに梅ジャムを塗って下さい。
昔からある梅が調理加工によって、ホテルの朝食に出てくるトーストに載せるジャムになるとは考えられない変化に驚くでしょう。
想像力豊かな皆様へ
<ヨーグルト><梅ジャムジュース><食パン>への利用しか思い浮かばない私が推奨する範囲は狭いですね。
梅ジャムを作る前から想像力が働く人は、実食前にそれをより増幅させてもらいたいと思います。
実食前から想像力が働いて、実際にやってみて、より良い活用方法を発見した方は、後学のために教えていただけないですか。