新型コロナウイルスが世界的に蔓延する中、シンガポールでは「デング熱」が大流行する二重の災禍に見舞われています。「デング熱」や「ジカ熱」は熱帯地方だけのウイルス感染症と捉えられますが、日本でも感染者が出る事実を知っていますか?対岸の火事ではない「デング熱」に対する認識を持つ方が賢明です。
シンガポールで!?
「デング熱」や「ジカ熱」の流行、蔓延を予防、阻止する政策は、熱帯地方諸国では当たり前の事です。
ほぼ赤道直下に位置するシンガポールは、極めて厳格な予防措置を政府主導で行っている国です。
特に公衆衛生管理が厳格な事で知られるシンガポールで、なぜ「デング熱」が大流行するに至ったのでしょうか。
コロナ禍で広まった在宅勤務
今年は新型コロナウイルスが世界中に猛威を振るい、スペイン風邪以来100年に一度の感染症に蝕まれています。
この新型コロナウイルスが「デング熱」の大流行を助長している可能性が高いらしいのです。
「デング熱」ウイルスを、あちこちに広める媒介者は「蚊」が筆頭に挙がり、刺されやすく、増えやすい環境が整ったとの見解です。
満員の通勤電車、都心で大勢の往来、多くの人が集うオフィスなど、従来の勤務状態や生活態様では「密」が生まれます。
「密」を避ける事がウイルス感染から逃れる一つの方法で、在宅勤務、リモートワークがにわかに広まりました。
シンガポールで広まった理由1
オフィスで働く人は在宅勤務が推奨され、屋外など現場勤務の人は、不要不急でない限り、現場を止めています。
在宅勤務者は人々の生活圏に近い状態に長い時間います。人々が多い所に「蚊」は多く生息しています。
シンガポールの都心はオフィスやショッピングモール、ホテルが立ち並び、人々が密集する大都会です。
人々が多くいる都心にも吸血する「蚊」が多くいてもおかしくありませんが、生活圏とは大きな違いがあります。
一般的な都心はオフィスや商業施設がひしめき合い、生活圏とは切離れた場所として考えて下さい。
デング熱やジカ熱を媒介する「蚊」は水場で産卵し、孵化したボウフラが「蚊」に成長します。
都心や都会には、このような「水場」はあまりなく(全くない訳ではない)、「蚊」が発生しにくいのです。
毎日都心に出勤していた人が在宅勤務に切り替わり、「水場」が多い生活圏に居る時間が長くなったのです。
シンガポールで広まった理由2
在宅勤務やリモートワークだけでなく、現場勤務の人たちの仕事にも広い範囲で影響が出ました。
どうしてもやらなければならない災害復旧のような仕事でない限り、現場仕事も一時停止することになりました。
例えば工事現場などは好例になります。定められた工期よりも新型コロナ感染拡大阻止に傾斜します。
熱帯地方のシンガポールでは、ほぼ毎日スコール(スコールは日本人特有の表現でフォールンと発音される)が降ります。
作業が止まっている工事現場に降り注ぐ雨水を排出する作業員はおらず、水たまりが「蚊」の温床になるのです。
工事現場だけではありません。たまった水を払しょくする人がいなくなった場所では、「蚊」が増え始めるのです。
「デング熱」基本情報
デングウイルスに感染して発病する感染症。数日間発熱するが自然治癒する事がほとんど。まれに「デング出血熱」を発症する例もある。
東南アジアや南アジア、中南米などの熱帯地方で蔓延し、日本では旅行などにより感染して帰国する症例があります。
国外感染例が基本になるが、海外への渡航歴のない人が日本国内で感染する症例(国内感染例)もみられることがあります。
デングウイルスを持っているネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されることで人への感染が始まります。人から人へ感染することはない。
「デング熱」がなぜ対岸の火事ではないのか1
デング熱ウイルスやジカ熱ウイルスは、熱帯地方ではない温暖湿潤気候の日本で、自然発生する事はありません。
日本人で「デング熱」ウイルスに感染して症状が出る人が、毎年200人前後にのぼる事実を知っていますか。
日本で自然発生するはずがない「デング熱」ウイルス感染者が発生するのは、感染者が帰って来るからです。
熱帯地方の国々は世界中に多くありますが、特に東南アジア地域は日本人が好む観光スポットです。
タイ、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インドネシア、フィリピンに始まり、カンボジア、ミャンマー、ラオス、ブルネイも挙がります。
タイだけでも日本人は、年間およそ100万人近い人が旅行をしているので、何百万人の日本人が訪れています。
東南アジア地域を旅行先として楽しむ人が多いです。私もしばしば東南アジアへ旅行に行きます。
私は「デング熱」に感染したことがありませんが、これは偶然感染しなかっただけと考えるべきでしょう。
「デング熱」がなぜ対岸の火事ではないのか2
太平洋沿岸諸国で嵐を起こす熱帯低気圧の「台風」の猛威はたびたび過去からその被害を報じられてきました。
2018年に近畿地方を襲来した「台風21号」は、タンカーを関西国際連絡橋に激突させる被害を出しました。
このような被害を出す規模の台風を経験した人は少なく、第二室戸台風から経験したことがないと母が言います。
近年の台風が猛威を振るう理由は、以前よりも多くの湿気を含んだ状態で、日本列島に上陸するからです。
湿気を多く含んだ「台風」は雨を降らせるだけでなく、多くの雨を降らせる上昇気流による強い風を伴います。
線状降水帯が生じて局所的に大雨を降らせ、河川氾濫を引き起こし、甚大な被害が出るのも地球温暖化の影響です。
日本でもヒトスジシマカは見られていますので、ネッタイシマカが適応できる環境が成立するかもしれません。
蚊が熱帯地方から日本まで自力で飛来するとは考えにくいですが、コンテナの空間に隠れてやってくることは十分に考えられます。
2014年には東京都の公園で感染が確認されたので、行政職員の方が殺虫剤を散布して退治したことがありました。
温暖化が続く以上、国内感染例が普通に出る時代がやって来るかも知れません。
デング熱は重症化例が極めて低い感染症ですが、ウイルスが変異して強毒化する可能性はあるのです。