今年一年の世相を表す漢字一文字を京都清水寺の貫主は「密」と揮毫し、世界中を席巻した「コロナ禍」を見事に表現されたが、その他候補に人々が挙げた漢字も味わい深く、特に疫病の「疫」を挙げた人々に大きく共感できる訳を考えて欲しい。
2020年の漢字は「密」
コロナ禍は「密」を避ける行動が原則とされましたが、今まで持っていなかった感覚を教えられました。
応募総数20万8025票の中で13%に相当する2万8千票余りが人々の共通感情であったからでしょう。
流行語大賞に「3密」が選ばれた事に呼応するかのように揮毫されたのは妥当な結果に思えます。
新型コロナ対策として避けなければならない「3密」ですが、真反対に近い意見もあったそうです。
テレワークやリモートワークによって、普段会わない人との接点が増えて、良い「密」ができたとか。
ところで「揮毫」の読み方は?
清水寺の貫主が「密」と書かれましたが、多くの報道で目にする「揮毫」と言う漢字がまず読めませんでした。
「きごう」と発音するそうです。私の日常生活ではほぼ目にする事がない漢字でしたから勉強になりました。
調べてみると、
「揮毫(きごう)」とは、毛筆で文字や言葉、文章を書く事を指すそうです。
揮毫の揮とは「ふるう」と言う意味があり、毫とは「ふで」と言う意味があるそうです。
揮は理解できなくもないですが、「毫」が「ふで(筆)」だとは想像できませんでした。
今年の漢字の選び方は?
日本漢字能力検定のキャンペーンとして、1995年から始まった比較的新しい習慣です。
その年の世相を言い当てる漢字は、公募により日本全国から最も多く集まったものに決まります。
京都市東山区にある清水寺の時の貫主が一存で決めて表現しているものではない事に納得できます。
2位以下の漢字は何だったのか?
2位「禍」
3位「病」
4位「新」
5位「変」
6位「家」
7位「滅」
8位「菌」
9位「鬼」
10位「疫」
どれもこれもよく言い表している漢字なので甲乙つけがたい様に思われる応募ばかりです。
2位の「禍」はコロナ禍で見聞きしましたし、3位と4位の「病」や「新」はコロナ禍そのものを言い表しています。
「変」はコロナ禍が大きな社会変化をもたらした事を表す漢字として的を射ていると思います。
「家」は緊急事態宣言下において外出を控えるよう報じられた「お家時間」に端があるのでしょう。
7位と8位には「滅」と「菌」が並びましたが、切り離さなければ「滅菌」と言う熟語になります。
手洗いやうがい、アルコールで手指消毒を皆が励行、心がけてきた事を表しています。
挙がった「菌」は少し認識がずれているように感じますが、ここはご愛敬として優しく考えましょう。
9位の「鬼」は、7位の「滅」に共通していますね。大流行した「鬼滅の刃」から出た漢字です。
コロナで苦しんだ1年でしたが、鬼滅の刃は「滅」と「鬼」の2文字を上位に連ねたのです。
10位に挙がった「疫」はウイルスそのもの
私達が生まれる遥か大昔から、人々はウイルス感染症の流行で苦しんできた歴史があります。
今年は新型コロナで世界中の人々が苛まれましたが、人々を苦しめるウイルスは多くあります。
身近なインフルエンザに始まり、昔から存在した人コロナウイルスは風邪の根源とも言われます。
風疹(ふうしん)、麻疹(はしか)、水疱瘡(みずぼうそう)に、私を含めて多くの人が感染してきました。
赤痢(せきり)、コレラ、ペストなどはあまり聞く事はありませんが、今もなお残る感染症です。
パンデミックになるほどの感染症の流行は、スペイン風邪以来およそ100年ぶりの事でした。
伝染して流行する病気を疫病と言いますので、100年に1度の出来事を10位の「疫」が端的に表現しています。