台風の発生数が極端に少なかったが、発生数が増え始めると災害級規模の台風がやって来る今年は、どの地方に上陸しても不思議ではない状況の中、被害に備えるためにも影響を受ける度合いが、「進路（通過するルート）」で大きな差が出る事を知り、自宅との位置関係による影響度合いを把握します。
台風の回転方向は決まっている
初期段階の熱帯低気圧は、回転して渦を巻きながら発達し、やがて台風規模として日本列島に到達します。
テレビなどで衛星画像が報じられるので、台風が回転している事は知っていますが、回転方向を覚えていますか。
日付変更線よりも西側の太平洋で発生し、日本や中国大陸に上陸する台風の回転方向は決まっています。
右回り（時計回り）なのか、左回り（反時計回り）なのか、いざ聞かれると答える事が出来ない人もいるでしょう。
北半球における台風の回転方向は、「左回り（反時計回り）」に決まっているのです。（今は理由を割愛します）
台風の回転方向に鍵がある
北半球の台風の回転方向は「左回り（反時計回り）」なので、図式化するとこのような絵になります。
先ほどの衛星画像と比べると一目瞭然ですが、台風の影響度が回転方向によって異なるとはどういう事でしょうか。
中心気圧や暴風域、強風域の範囲の広さでも影響度は変わりますが、回転方向が地域への影響度も変えています。
回転方向で影響度が変わる
台風を図式化した絵に、いくつかの矢印を加えて現した図を見て頂きながら、解説を進めていきます。
台風の中心である「目」を貫くように加えた「上方向の矢印」は台風の進行方向を示しています。
そして台風の中心に向かって吹き込む風は「左回り（反時計回り）」なので、同じ回転の風の影響を受けます。
北半球における「左回り（反時計回り）」の回転では、中心線の右側と左側では、大きく影響度が異なります。
影響度が異なる理由は
上下に描いた台風の中心線の右側と左側で、風の影響がどうして異なるかを考えてみます。
中心気圧が低い台風は、周囲の空気を吸い込みながら、おおむね北の方向に回転して移動しています。
台風に吸い込まれた空気は上昇して流れ続けるも、行き場がなくなるので、外側に吐き出されます。
台風が空気を吸い込む時と吐き出す時の回転方向は同じなので、風による影響度が加速するのです。
中心線の右側では、台風が吸い込んで吐き出す風の勢いに、台風が進む方向の速度が加わります。
一方中心線の左側では、台風が吸い込んで吐き出す風の勢いと反対方向に台風が進んで行く事が解ります。
つまり台風が吹き出す風は、台風が進む速度で相殺されるので、風の影響が少なくなるのです。
専門表現を知りましょう
台風の中心に描いた左右を分断する矢印の右側を「危険半円」、左側は「可航半円」と言われています。
「可航」とは船が航海することができ、「危険」とは船の航行は危ない事から、このように表現されます。
台風が進行する勢いに加えて、回転によって生まれる風の勢いが相乗効果となり猛烈な風が生まれます。
波のうねりは時に数十メートルに達するので、大型船でも危険で、小型船であれば飲み込まれて沈没します。
進路（ルート）の右側は警戒を
２０１８年の台風２１号（近畿地方で瞬間最大風速５８．１ｍ／ｓ）がたどったおよその進路を見てみます。
兵庫県神戸市付近の上空を台風の中心が通過したと見られるので、このような軌跡になります。
エンジン全開で難を逃れようとするも、関空連絡橋に激突したタンカーは、台風進路の右側でした。
和歌山県から大阪府南部の泉州、大阪中心部の梅田から北摂地域まで、多くの建物被害が出ました。
屋根がめくれ上がり、切った電線で火花が飛び散り、横転したトラックが淀川の橋から転落寸前になるほど。
台風２１号がもたらした強風被害は、保険会社の算定で１兆円を超える、未曽有のものとなりました。
一方、台風進路の左側にあった兵庫県における被害は、大阪府や和歌山県に比べると少ないものでした。
まとめ
図式化した絵を基に表現してきましたので、向かって右や左と言いましたが、地図に置き換えると、東か西が適切な表現です。
台風の進路予想はあくまで予想ですが、近年の分析力は高まっているので、ほぼ的中するでしょう。
でも予想外の進路を辿る場合もあるので、台風情報は最後の最後まで予断を許さず確認すべきです。
そして台風進路の東側に自宅がある場合は、風の影響をより大きく受ける可能性が高い事を認識して下さい。
どの程度の被害を受けるかは個別違うものですが、楽観視することなく最悪想定でいるべきです。
出来る限りの対策を講じ、それでも身の危険を感じる場合は、安全な場所や施設に避難して下さい。
