土用の丑の日が近づく季節にシラスウナギの漁獲高が増加したとの報道を聞き、今年はお手頃価格でうなぎが食べられるかとの期待が膨らみます。近年高騰を続けているうなぎの価格が低下して、庶民の口に入りやすくなるのは有難い事ですが、今年のうなぎの値段は如何に推移するのか。
スタミナ食うなぎ
夏バテ防止に効果てき面な「うなぎ」は、毎年「土用の丑の日」に珍重されてきました。
人々は厳しい夏の暑さを耐え抜くスタミナを与えてくれる「うなぎ」を愛してきたのです。
「夏のスタミナ食と言えばうなぎでしょ!暑さ本番を前にうなぎを頂き備えたいと思います。」
多くの人がこう思う中でのシラスウナギ豊漁の報道に期待せずには居られなくなります。
うなぎがスタミナ食と言われる理由
うなぎはビタミンA、B1、B2、D、Eだけでなく、DHA、EPA、コラーゲン、ミネラルなど大切な栄養素を豊富に含みます。
ビタミンA群、B群の含有量は豊富で、人が一日に必要とする量を1尾で摂取する事が出来るほどです。
ビタミンAはチーズの約3~4倍、たまごの約5~6倍、ビタミンB1はほうれん草の10倍近く含んでいます。
魚体からは動物たんぱく質を、骨からはカルシウムを摂取する事ができ、ご飯と共に食べると炭水化物が補われます。
完璧な食材とまでは言えなくとも、かなり理想的な栄養素をバランスよく摂る事ができるからなのです。
どのくらい豊漁なのか
水産庁の調査統計によると、今年2020年の漁獲高は17トンを超えたとの事でした。
これは2014年以来の豊漁で、2018年の約9トン、2019年の約4トンの記録に比べても際立ちます。
そこでシラスウナギの価格はどう変遷したかですが、1キロ当たり平均価格は144万円になったそう。
1キロ当たり最高値だったのは2018年でしたが、約300万円であったその価格からは半値以下になります。
うなぎの成長時間
ご存知の通りシラスウナギは稚魚で、その大きさは10センチ以下の小さな魚体です。
このシラスウナギが店頭に並ぶ立派な成魚に育つには、半年から1年を要するそうです。
食用として流通するうなぎの大きさは、およそ25センチから大きくても40センチくらいが多いでしょう。
シラスウナギが成魚になるまでに、もっと多くの時間がかかると思っていましたが、意外に早く成長します。
今流通しているうなぎは?
日本沿岸で採捕されるシラスウナギの漁期は12月から翌年の4月までに限られるようです。
この期間に採捕されたシラスウナギは、池入れされて、餌を与えられながら成魚に育つのを待ちます。
成長著しい個体でも半年はかかり、晩稲な個体では1年近くかけて、出荷されていきます。
今年2020年の土用の丑の日は7月21日ですが、供給されるうなぎは、半年以上前の漁獲分になります。
今年豊漁であったシラスウナギが成魚になって出荷される時期は、早くても6月頃になるのです。
詰まるところ、今流通しているうなぎは、2018年12月から2019年4月に採捕されたものなのです。
うなぎが安くなる時期は
2019年12月から2020年4月に採捕されたシラスウナギの大半は、土用の丑の日以降になります。
最も遅い時期である4月に採捕されたシラスウナギが出荷されるのは、早くても10月以降になります。
成魚になるのに1年近く要する個体の存在を考えると、10月から徐々に価格が下がり始めるかも知れません。
今年の土用の丑の日に出回るうなぎは、昨年と同程度の価格水準になると予測する事ができます。
残念ながら、この夏を乗り切る伝統的なスタミナ食「うなぎ」は、昨年通りになりそうです。
でも中には消費者の期待に応えようと昨年よりもすこし抑えめの価格で提供してくれる販売店が出てくるかもしれません。
シラスウナギ豊漁の知らせは、先安観を想起させるものなので、この期待だけは残したいものです。